心理的安全性研修

心理的安全性を理解することで、チームの現状を理解し、リーダーとして心理的安全性を高める行動を考える

心理的安全性(psychological safety)とは

「心理的安全性」の提唱者として知られる、ハーバード・ビジネススクール教授のエイミー・エドモンドソン(Amy Claire Edmondson)は著書『恐れのない組織』で「心理的安全性」を、『率直に発言したり懸念や疑問やアイデアを話したりすることによる対人関係のリスクを人々が安心して取れること』と定義しています。心理的安全性はチームの大多数のメンバーが共有すると生まれる、集団全体で共有される心理的現象です。
例えば会議に出席する大多数のメンバーが「率直に周りと異なる意見を言ったり、質問したり、提案したりしても嫌な顔をされない」と感じているなら、そこには心理的安全性が存在していると言えます。

 

研修の狙い

  • 心理的安全性とは何かを学び現状分析を行う
  • 心理的安全性の高い職場と低い職場の違いを理解する
  • 心理的安全性を高めるリーダーとしての行動を考える

プログラム

※内容は、貴社のご要望に応じ、カスタマイズが可能です。
※時間の目安は10:00~17:00です。

1.心理的安全性とは

(1)心理的安全性とは
(2)心理的安全性の高い職場とぬるま湯的組織の違い

2.チームの現状を考える

(1)自由闊達な議論ができない組織の弊害
(2)心理的安全性を阻害する「対人関係のリスク」と4つの不安
(3)心理的安全性を高めることのメリット
(4)チームの現状を考える【ワーク】

3.チームの心理的安全性を高めるために

(1)チームの心理的安全性を向上させる仕組み
  ・文化を作る~失敗は恥ずかしいものではない
  ・メンバーが発言しやすいよう参加を求める
  ・ビジョンを共有し意欲を刺激する
(2)サポートを意識したマネジメントを行う
  ・サーバントリーダーシップ
  ・悪い報告を歓迎する
  ・「1on1ミーティング」
(3)心理的安全性を脅かすメンバーに対処する

4.まとめ

心理的安全性を高めるために実施すること【ワーク】

心理的安全性の獲得は難しい?

エドモンドソン教授の定義を言い換えれば、素朴な疑問や思い付いたアイデアをチーム内で率直に気兼ねなく話せるということになります。一見簡単なようにも思えますが、「空気を読む」という文化をもつ日本人は、間違っていると思いながらも、衝突を避けるために自分の主張を控える傾向があり、実際には言うべきことを言えなかった経験を持っているのではないでしょうか。残念なことに、チームに心理的安全性が不足しているケースが多いのが実情です。まず、心理的安全性が必要であることを理解するために、不足しているチームの特徴についてお話しさせて頂きます。

 

心理的安全性を阻害する「対人関係のリスク」

エドモンドソン教授は「対人関係のリスク」とは、素朴な疑問や思い付いたアイデアをチーム内で率直に気兼ねなく話すことの見返りとして、「無知」「無能」「邪魔」「否定的」だと周りから評価を受ける「罰」や「罰に対する不安」と定義しています。

人は職場で意識的にも無意識にも、「対人関係のリスク」に対応せざるを得ない場合、アイデアや疑問・懸念を率直に話し合うことを制限してしまいます。

心理的安全性の不足しているチームの特徴

具体的には次のような現象が職場でよく見受けられるなら、心理的安全性が低いと考えられます。

(1)会議の後に質問がくる
会議の場では特に質問は出ず、出席者全員が理解してくれた様子でしたが、廊下に出た途端、「さっきの○○はどういう意味?」と質問を受けた経験をお持ちの方は多いと思います。質問を発端として、もっと有意義な議論ができた可能性や関連した問題点の洗い出し、又は、新たなアイデアが出た可能性をムダにしているケースです。

(2)建設的な意見が言えない。正しい現状報告が上がってこない
上司の反応が分かるまでは、意見を言うことを控えるということが起こりがちです。特に、上司が進めたプロジェクトに関しては、率直な意見を言うことをためらうといったケースがこれに当たります。
同様に、現状報告についても、良くない状況の場合、「今は報告を控えよう」や「問題点については、触れずに報告する」というようなことが起こってしまいます。リーダーが良い知らせしか歓迎しない場合には、ミスの報告が遅くなることや、正しい現状報告が上がってこなくなるといったことが起こります。これでは、ミスを契機とした学習や改善が阻害されることはもちろん、経営戦略をミスリードする可能性すら生じます。


(3)総論賛成・各論反対で、決まったことが進まない
会議の場では、大枠では賛成したものの、具体策については建設的に反対したり気兼ねなく考えを交換し合ったりということができず、いざ実施する段階になっては、「その策には賛成ではなかった」と協力をせず、プロジェクトが進まなくなるケースです。

(4)リーダーが、自身の権力を使うことが有効なマネジメントだと誤解している

目標の未達者に対して、厳しく叱責するようなマネジメント(ノルマ主義)や、上司が決めたことは絶対というようなワンマン体制が今も行われているのは事実です。しかし、これでは心理的安全性にはほど遠い組織となります。

 

心理的安全性研修を行う4つの目的・メリット

心理的安全性研修を行う目的・メリットメリットとして、大きく以下の4つが挙げられます。

(1)チーム学習能力の向上
心理的安全性が確保されることで、率直な意見交換やミス・失敗の共有がされることから、知識を共有したり、提案したり、より良いアプローチを話し合ったりする学習行動が活発化します。こうした能力を組織が身につけることによって、長期にわたって持続的にパフォーマンスを出しつづけることができます。

(2)生産性の向上
組織の心理的安全性は、生産性に大きな効果を及ぼします。心理的安全性が高くなると、チームのメンバーにフロー状態が生じます。
フロー状態とは、心理学で夢中になる、のめり込んでいるといった精神状態を意味します。メンバー全員が安心しながら集中して仕事に取り組めるため、業務の生産性も高くなり、効率的に業務を遂行できます。


(3)イノベーションの促進
心理的安全性が低い組織は、もし意見やアイデアがあったとしても、「面倒がられるだけ」、「理解してもらえないから言っても無駄」といった状態に陥りやすくなります。一方、心理的安全性が高い組織は、お互いを信頼でき、マネジメント層でなくても各自が、現状をより良くしていこうという前向きなマインド変化が育まれ、次々と新しいアイデアを出すことができます。

(4)離職率の低下・エンゲージメントの向上
心理的安全性が高いと、チームメンバーの関係も良好になり、また信頼されていると感じることから自己重要感(自分自身が価値のある存在であると感じる)が高まります。その結果、仕事へのやりがいが生まれ、自分の能力や特技を活かしながら業務にも取り組めるため、エンゲージメントの向上に繋がります。又、今の会社で長く働きたいと思うようになることから優秀な人材の流出や退職の抑制にもつながります。

 

心理的安全性の計測方法

心理的安全性を高める取り組みを始める前に、現状を計測することが大切です。エドモンドソン教授は、心理的安全性を7つの質問で計測する方法を提唱しています。

(1)心理的安全性を測定する7つの質問
①チームの中でミスをすると、たいてい非難される
②チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える
③チームのメンバーは、自分と異なる個性を理由に他者を拒絶する場合がある
④チームに対してリスクのある行動や発言をしても安全である
⑤チームの他メンバーに助けを求めることは難しい
⑥チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない
⑦チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる

ネガティブな回答が多ければ、チーム内で信頼関係が築けておらず、上述した4つの「対人関係のリスク」に対応する必要が高いと考えられます。


(2)心理的安全性が高い職場でみられるサイン
他にも、エドモンドソン教授は心理的安全性が高い職場でみられるサインとして、
①ポジティブな発言が多い
②日頃からミスや問題についても話す機会が多い
③職場に常に笑いやユーモアがある
などを挙げています。

チームメンバーの会話や雰囲気などを観察することで、心理的安全性の高低を確認できるはずです。

 

心理的安全性の作り方

(1)チームの心理的安全性を作るのは誰か
エドモンドソン教授の研究によると、心理的安全性は、チーム内のメンバーの相性が良くて生まれるものでも、知らぬ間に生まれるものではなく、心理的安全性の条件を上手く作り出せるリーダーがいる一方で、作り出せないリーダーもおり、リーダーが心理的安全性を作る上で重要な役割を果たすことが判明しています。

(2)リーダーの心理的安全性の作り方
冒頭に記載した通り、心理的安全性はチームの大多数のメンバーが共有すると生まれる集団全体で共有される心理的現象ですから、心理的安全性が不足している場合は、メンバーが持つ思い込み(「フレーム」)を根底から覆す「リフレーミング」を行う必要があります。

❶失敗を恥ずかしいものではないとする
VUCAの時代には試行錯誤することを重視しなければなりません。積極的な失敗に「罰」を感じさせては、人は委縮して何も挑戦しなくなります。

❷メンバーが発言しやすいよう参加を求める
まずリーダーは、気さくで話しやすいことが必要です。そのためにも、自分が完璧で何でも知っている訳ではなく、ミスをする人間であることを開示し、メンバーの発言を心から求める謙虚さを持たねばなりません。

❸ビジョンを共有し意欲を刺激する
自分たちの仕事がなぜ顧客や世の中にとって重要なのかをリーダーがメンバーに思い出させることは、困難を乗り越えることや、高い目標に向かうエネルギーが生まれやすくなります。極めて多くの心理学の研究により、目的と意味を実感することが高いパフォーマンスを上げることが証明されています。

❹サポートを意識したマネジメントを行う
前述のとおり、リーダーが組織における影響力を重視し、目標達成に権力を使うことは心理的安全性を大きく低下させます。なぜなら、目標達成のために、部下には自身の影響力を背景に一方的に命令するコミュニケーションをとり、そして、目標未達の場合には、部下を「罰」することで責任を取らそうとするからです。逆に、リーダーが部下をサポートする組織運営を行うことで、安心感が増します。
 

❺「1on1ミーティング」を実施する
「1on1ミーティング」とは、メンバー一人ひとりの目標や成果を確認するため、1on1(1対1)で上司と部下との対話を定期的に実施することです。上司に自分の意見を話せる場を1on1で設けることで心理的安全性を高める効果が期待できます。1on1ミーティングにおいて重要なのは、上司が部下に現状の問題の解決策を考えさせることです。そのため、「部下に話をしてもらう」「上司が先に自分の考えや答えを言わない」「上司に依存した関係にならないようにする」といったことに注意しなければなりません。

(3)メンバーの心理的安全性の作り方
リーダーが心理的安全性を作り出す柱ではありますが、チームのメンバーがリーダーシップ(他者に影響を与える能力)を発揮し、リーダーとしての役割を行うことも可能です。

❶ 競争よりも協力を心掛ける
常にチームのメンバー同士の間で競争状態にある場合、リラックスして仕事をすることは難しく、逆に「困ったときは誰かに助けてもらえる」と感じられれば、安心して仕事ができます。一人ひとりに分からないことや出来ないことがあるのは当然のこととして考え、相互に協力し合えるチームを構築することを心掛けましょう。

❷他のメンバーの意見に感謝する
自身が進めている案件に関して見つかった課題や問題に対する意見を他のメンバーから指摘された場合、自己防衛的な対応を行いがちです。しかし、「自分自身も間違えることもあるし、それを認めても良いのだ」と考え方を少し変えるだけで、「指摘を受け入れて、改善しよう」とポジティブに捉えることできるができます。又、反論する場合にも、指摘をしてくれたことに感謝の一言を添えることで、健全な議論を行うことができます。チームで仕事を進める上で失敗や苦労を経験している方、また、前の部署では上手くいったのに、この部署では上手くいかないといった経験のある方もいらっしゃると思います。しかし、上手くいったとき、いかなかったときのご自身の行動をもう一度見つめ直したとき、「心理的安全性」の作り方に原因があったと気付く方が多いのではないでしょうか。「心理的安全性」は組織・チームには今は眠っている多様な可能性と充実感と成果をもたらす土台です。

 


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